d1d3b398.jpg これも若い女性からお薦めをいただきました。このような映画に感動する若い人が女性に限らずまだいるのを知って日本文化・精神は暫くは守られるかも?と嬉しくなりました。邦画「春の雪」(2005年。行定勲監督)をレンタルで観ました。こんなにも美しく、そして、哀しい映画を見た記憶があまりありません。生涯忘れえぬ作品になるでしょう。

 大正初期の華族社会が舞台。侯爵家の嫡子・松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の令嬢・綾倉聡子(竹内結子)は幼なじみ。いつの頃からか、互いに淡い恋心を抱くようになります。しかしやがて、聡子に宮家の洞院宮治典王との縁談話が持ち上がります。困惑する聡子。冷たい態度をなぜか取る清顕に失望し、縁談を遂に承諾してしまいます。清顕はようやく、聡子への愛に気が付くのですが、それはこの結婚に勅許が下りた後でした。

 先日、三島由紀夫著「葉隠入門」を読み終えました。「葉隠」にこんな一節があります。<<・・恋の至極は忍恋と見立て候。・・一生忍んで思ひ死にする事こそ恋の本意なれ。・・>>。その三島の遺作となった「豊饒の海」4部作の第一巻「春の雪」がこの映画の原作です。三島によると、「豊饒の海」は仏教や神道、そして、東洋の伝統を踏まえて書かれています。そのテーマは「夢と転生」。

 百人一首「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わむとぞ思ふ」(崇徳院)を聡子は好みます。彼女が「転生」を信心しながらこの短歌を胸に秘めていることがわかった時、二人の悲恋が最高に美しく、また、最高に哀しく映り、涙を禁じ得ません。美しさと哀しさ、自然と人間、さらに、来世と現世が見事なまでに一つになる素晴らしい三島ストーリー、素晴らしい映画でした。