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「お祝いのことば」と題した吉田康人から新成人のみなさんへのメッセージは次のとおりです。

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成人式の開催、誠におめでとうございます。住吉区長の吉田康人でございます。主催者、ご来賓各位、そして、住吉区民を代表して、新成人のみなさんへお祝いの言葉を贈ります。

まず、本日の「住吉区成人の日記念のつどい」をともに主催してくださっている住吉区青少年指導委員連絡協議会のみなさんへ厚く御礼申しあげます。ありがとうございます。

さて、改めまして新成人のみなさん、おめでとうございます。お気持ちはいかがですか?。

一昨年の成人式で、私は、第二次世界大戦末期の特攻隊の中隊長のお話をさせていただきました。昨年の成人式では、「サト原人さんの話」という子育てビデオを見ていただきました。

これらのメッセージは、区民のみなさんへ宛てたメッセージでもあってホームページへアップしていますので、また後で見ておいてください。

今年は、私自身のお話をさせていただきたいと思います。

新成人のみなさんは、「死にたい」と思ったことがありますか?。そこまで行かなくても、自分には生きている資格があるのかと思い悩んだことがありますか?。

私は、みなさんと同じ、20歳前後に一度深く思い詰めたことがあります。そして、子育て真っ最中の30歳代にも、40歳代にもありました。その時のことを振り返ると、今、ここにこうして立っていることがとても信じられない思いです。

みなさんは、体のどこも悪くないのに、心のダメージから、体が動かなくなったり立てなくなったりしたことがありますか?。私には、「もうこのまま寝たきりになってしまのではないか?」と焦り、でも、体が動かない日がありました。

プライベートなことなので詳しくは申し上げませんが、30歳代、40歳代にどんなことがあったかというと、お金も、人脈も、お仕事も、友人関係も、人生のすべてを賭けてやったんですけれど、人のお役に立つための事業に失敗したんです。失敗したと申しますか、こっちは97点取ったんやけど98点取った人がいた。だから負けた。こんな感じです。

実際にその前後に大きな病気になったり亡くなった仲間も出た壮絶な戦いだったので、反動も大きかった。人のお役に立ちたいと思ってしたのに、かえって、人さまにご迷惑をお掛けすることになりました。だから、「こんな自分なんか、がんばってもしょーがないやんか?」、「生きる価値あるんかな?」、「いろいろやりたいことあるけど、またご迷惑かけるだけちゃうか?」。私は、こんなことを何度も何度も何度も考えました。

失敗したこともそうなんですが、さらに、考えれば考えるほど深みに落ちていく、弱くなっていく自分が情けなくてそんな自分に悔しくて泣きました。家族が私の足元にすがって泣く夢は見ましたが、実際には、その家族に「同じ思いをさせてはならない」と慮り、自分の深い悲しみを打ち明けませんでした。それで、夜中、明け方、家族が眠っている横でいく晩もいく晩も布団を被って泣きました。「情けない」とひと晩のうちに何百回も考える日が続きました。

今日この会場に1000人ほどの新成人のかたがたがいらっしゃいますが、恐らく、このうち何十人かのご家庭でゆうべ、みなさんが知らないお布団の中でひとりしくしくと誰かが泣いていたはずです。この壇上のかたがたも、社会や個人の多くの課題と戦ってこられたみなさんですので、同じようなご経験をお持ちでいらっしゃいます。

成人になると、深い悲しみや悩みのどん底に突き落とされることが多くなります。家族とか地位とか財産とか、背負うものが大きくなればなるほど、悲しみや悩みもどんどん大きくなっていきます。現代社会においては、今、心の病に打ち勝てず、お仕事ができなくなり、家に引きこもる若者が増えています。現代社会では同時に、家庭や地域、学校の癒しの力がどんどん弱くなっています。

私は、成人式を迎えたみなさんを前にして、そのことが心配で心配で堪りません。こんだけ大勢いらっしゃるのでわずかなことしかできないのはわかっているのですが、「みなさん全員のお話を聞いて差し上げたい」と、胸をかきむしるような思いで今ここに立っております。

そんな無力で申し訳ない私からみなさんへのメッセージは3点です。

1つは、「こんなことを将来やりたい」との大きな夢を持つことも大切ですが、同時に、どんな境遇に置かれても「いつかは必ずよくなる、陽は必ずまた昇る」と信じて耐え忍ぶ、明日への希望も決して失わないでいただきたいということです。

ゆずの歌に、「誰の心も、雨のち晴れるや」というフレーズがあります。映画「桐島、部活やめるってよ」の主題歌は「例え明日を見失っても、明けぬ夜はないさ」と歌っています。「赤毛のアン」の出版記念パーティーで吉高由里子演じる花子はこんなスピーチをします。「どんなに不安で暗い夜でも、必ず明けて朝がやって来ます。そして曲がり角の先には、きっと1番いいものが待っています」。

私自身の経験から2つめのメッセージを差し上げます。私は、生きる意味をいったんは失った私自身の新しい役割を見つけることで、誰にも負けない強い心を持つことができるようになりました。もしみなさんの中に、深い悲しみや悩みに陥るかたがいらしたら、私はそのかたへお伝えしたい。あなただからこそ、その役割として、深い悲しみ、悩みのどん底に落ちた人の話を聞いてあげられるんです。そして、「人を助けてあげよう、人の話を聞いてあげよう」というその優しい心こそが、周りの人々だけでなく、あなた自身をも優しく助けてくれます。

それでも耐えられないかたがたへの3つめのメッセージです。私へ連絡をください。私へあなたの悲しみや悩みを聞かせてください。お待ちしています。

最後に、大人の世界へようこそいらっしゃいました。人々の痛み、深い悲しみや悩みが絶えないけれども、「陽は必ずまた昇る」と明日への希望を決して失わず、「人を助けてあげよう、人の話を聞いてあげよう」という優しい心に満ちた日本を、この住吉から一緒につくっていきましょう。

おめでとうございます。ありがとうございました。

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 一昨年、昨年のメッセージは2013年1月22日付( http://log.yoshidayasuto.jp/archives/4348135.html )・2014年1月15日付( http://log.yoshidayasuto.jp/archives/4682853.html )「やすとログ」をご参照ください。